Singin' in the Rain

 

・・・

「えっと〜、雨のなかでうたっています・・・私はただ雨の中でうたっています」

「うん、それでも正しいんだけどね、真宵ちゃん。タイトルが(雨にうたえば)だから、ここは意訳しちゃっていいと思うよ」

 

 

昼下がりの成歩堂法律事務所。

月中のふと、時間が空いたその日になるほどくんに英語を教えてもらうことにしました。

学校の宿題なんだけど、人に教えてもらうのって楽でいいよね〜。

 

 

「Laneって何?私はレーンを下っていきます?」

「自分で辞書を引きなよ・・・」

「じゃあそろそろ休憩にしよっか!なるほどくん!あたし疲れちゃった!」

「いやいやいやいや。僕のほうが何倍も疲れてるから」

「なるほど君、あたしミルクティーがいい!」

「聞いてくれよ・・・・・・」

 

 

 

I'm singin' in the rain, Just singin' in the rain.
(雨に唄えば ただ、雨に唄えば)

What a glorious feeling! I'm happy again.
(なんて素敵な気分! 私は再び幸せになれた)

I'm laughing at clouds so dark up above.
(私は空を覆う暗い雨雲に笑いかける)

The sun's in my heart and I'm ready for love...
(太陽は私の心の中に、 新しい恋にはぴったりだ…)

 

 

ソファに座ってラジオをつける。

あたしの左になるほど君が座る。足を組んで、右手でほおづえをつく。

ぼんやりとコーヒーカップに口をつける、なるほど君の横顔。

横目に見ながら、ふと、思わぬ言葉があたしの口をついて出た。

 

 

「あたし、知ってるよ。」

 

 

 

自分の言葉に自分で驚いて、はっとしてうつむく。

なんで、そんなこと。

うつむいた時、視界の端になるほど君の不思議そうな顔が見えた。

「な・・・なんでもない。」

ミルクティーをすすって、ソファにぼさっ、と乱暴に体をあずけた。

 

 

大掃除の時、裁判の記録を記したファイルから出てきた、写真。

なるほど君が、ピンク色のはずかしーいセーターを着てる写真。

「うわあ、なるほど君、いいセンスしてるねえ」 からかおうと思って、途中で言葉を飲み込んだ。

窓を拭く背中を呼べなかった。

 

うれしそうに下がりきった眉尻。

鼻とほっぺたを赤くして幸せそうに笑う写真の中のなるほど君。

だって、写真のなるほど君は、とてもうれしそうで、とても幸せそうで、

 

 

…あたしの知らない表情をしていたから。

 

 

 

「なんだよ、真宵ちゃん。悪いことしたなら隠したってわかるんだぞ。」

「違うよー。・・・なんでもないもん。」

ラジオから、知らない英語の歌が流れてる。

 

 

「ねえ、なるほど君。何が幸せだなあって思う?」

「え?さ、さあ…?………そうだね、みんなが元気で幸せでいることかな?」

「模範解答だね、なるほど君。」

「言わせておいて僕は偽善者扱いなのか?」

 

そっと、なるほど君の組んだ脚のひざにあごを乗っけてみる。

なるほど君は大きい。

なるほど君は頼りがいがある。

 

「ね、先生が言ってたんだけど、どんな人間もその行動の根拠は『自分が得すること』に基づいているんだって。」

「哲学?」

「知らない。」

「知らないって」

「ねーーーなるほど君。あたしはなるほど君に何ができるかなあ。」

 

通った鼻筋。変なマユゲ。

なるほど君の黒い瞳がとまどいがちにあたしを見下ろしている。

そして、強く、優しく笑って言った。 真宵ちゃんがいてくれるだけで結構助かってるんだよ、と。

「いつも迷惑かけてばっかりで、ごめんね…」

おっきな掌が、頭をなでてくれる。 安心して、眠くなる。

 

 

「あのね なるほど君………」

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「英訳の残り、よろしく。」

「っておいおい!!」

 

 

 

 

あのね なるほど君。

 

 

 

 

あたしも

 

 

 

 

お姉ちゃんみたいに想われたい

 

 

 

 

 

 

御剣検事みたいに深く信頼されたい

 

 

 

 

 

あたしも、なるほど君のちからになってあげたい。

 

 

 

 

あたしには、遠い遠い道だと思う。

そんなことは、わかってる。

でも、どんなに道のりが遠く長く続いても、

あたしには目標がある。

 

どんな大変なことがあっても歩いていける。

 

 

なるほど君。

 

 

Let the stomy clouds chase everyone from the place.
(嵐よ、みんなをこの場所から追い払って)

Com'on with the rain, I was smile on my face.
(雨といっしょに行こう 僕は笑顔を浮かべている)

I walk down the lane with a happy refrain.
(道をずっと歩きながら口から出るのは楽しいメロディ)

Just singin', singin'in the rain.
(ただ、 ただ雨に唄えば)

 

 ラジオは歌い続ける。

 

おしまい。

 コメント: ぐはぁ(吐血)
       く…くさっ!
       なんていうか、改めてこのゲーム、御剣さんと成歩堂がラブだなあって気づいてしまったり
       3の成歩堂くんのピンクファッションが可愛いと感じてしまったり
       そんな作品。(意味不明)

      がんばれ真宵ちゃん。